Hさんは予備校では優等生だった。のんびりやっていたという高校時代の成績は中の上くらいだったようだ。客観的に見れば、「早慶」にも手が届くほどの実力がついていたのに、自分はダメだと自ら追い込んでしまい、模擬試験の成績すら信用しなかった。Hさんはもっと自分を評価すべきだったのだ。そして「疲れ」を認め、適度の休息をとる必要があった。長時間、アクセルだけを踏み続けて、山も坂もある険しい道を走り続けたあげく、オーバーヒートした自動車のような状態だった。ガス欠の可能性もあった。つまり心のエネルギーが枯渇してしまう可能性もあったのだ。賢明なHさんはぎりぎりのところでガソリンスタンド(カウンセリングルーム)に飛び込むことができた。カウンセリングルームでは、無理な大学受験勉強が原因となる、極度の神経疲労への対処、「頑張り屋の性格」について話し合った。そしてすでに目標校には合格が確実の実力である点を保証し、休息のしかたを具体的に提示することで、一回でカウンセリングは終了した。ガソリンが補給され、エンジンもすぐに冷却されて元に戻った。しかし、彼女は、私の忠告を半ば無視して五時間睡眠のままで突っ走り、受験した大学のほとんどすべて(九校中八校)に合格してしまった。受験直前の一ヶ月間は図書館で勉強した。元気がなくなると、図書館から母親に電話して泣きごとを並べ立てた。それで胸のつかえをとり、すっきりさせてまた勉強に励んだ。カウンセリングをきっかけに母親に甘える自分を許せるようになっていた。「どこでもいい。受かったところに行こう」と開き直ってからは「肝がすわって、睡眠もよくとれるようになり集中力が回復した」とHさんはいう。